2025年11月20日、株式会社奥羽木工所での不当な懲戒解雇裁判は、仙台地方裁判所において、勝訴的和解で決着しました。
懲戒解雇を撤回しただけでなく、会社が「無効な解雇」について遺憾の意を表明し、そもそもの6割という嘱託賃金は7割で再計算され、本来であれば勤務したであろう65歳嘱託満了時までの賃金相当額を支払うことで和解しました。
全面的な勝訴和解といってよいでしょう。
河北新報→ニュース記事(有料記事)
1)和解内容については以下の通りです。
1、原告と被告は、被告が、原告に対してした令和4年11月30日付け解雇の意思表示を撤回し、同日、原告が被告を、会社都合により、合意退職したことを相互に確認する。
2、被告は、原告に対し、本件解決金の支払義務があることを認める。
3、被告は、原告に対し、前項の金員を支払う。
4、被告は、原告に対し、被告が原告に対して無効な解雇をしたことについて遺憾の意を表明する。
5、原告と被告は、今後、互いに誹謗中傷をしないことを約束する。
6、原告と被告は、前項が、原告が正当な組合活動の範囲内で本件和解の内容を第三者に説明することを妨げるものではないことを確認する。
この和解は、奥羽分会として、労働者の皆さんの人権、労働主権が認められた、重要な勝利です。
2)和解が示す位置について
1、桜井分会員への懲戒解雇は「無効な解雇」だったと会社は認めました。また「遺憾の意を表明」したことは謝罪と同義といえます。
2、では、会社が『無効な解雇をし』、懲戒解雇を『撤回』したとはどういうことでしょうか?
会社が2022年11月に懲戒解雇したことが「無効な解雇」であったとは、法的には違法であるという意味です。つまり、契約において賃金や働く場所の合意なく、就業規則にない異動命令を乱発し懲戒処分をしたことは誤りだったといえます。労働者は社長に従え、という奥羽木工所の専横体制がおかしいということが裁判を通じて明白になりました。
しかしながら、働く権利があったにもかかわらず、約3年間もの間、A分会員は会社の一方的決定により働くことを奪われてきました。
そのため、65歳の嘱託終了時まで働いた賃金に相当する額を解決金として会社が支払うこととなりました。働く権利のもと労働していることが具体的に証明されることとなったのです。
3、さらに、奥羽木工所では、定年後嘱託雇用の賃金として定年前の6割で計算されます。この賃金については、契約も成立していないし、団交で協議するはずだったのに会社は一方的に決めつけ交渉にも応じようとしませんでした。
和解においては定年前の「7割」相当額で合意しました。
組合は、60歳定年で体力が低下することはない、熟練労働者の知識と経験を若手へ教育すべき、人生100年時代の生きがいとしての労働力の活用を提案してきました。もちろん、契約は双方協議の上合意すべきで、会社が一方的に押し付けるものではありません。
和解で7割となったことは、現在、奥羽木工所のなかで嘱託で働いている労働者にとっても共通する問題です。定年後の労働条件に風穴を開けた画期的な和解といえるでしょう。個人のことではなく、奥羽木工所の従業員全員の嘱託再雇用の制度改革について、改善を求めることができます。
4、条項5と6では、「正当な組合活動」を妨げることはあってはならないと明記されました。裁判所での和解内容、背景を、労働者の皆さんに正しくお伝えすることも、会社の圧力から妨げられるようなことの無いように、和解条項に示されたといえます。
以上のように、裁判は奥羽木工所分会の勝訴的和解です。
3)今後の奥羽分会の取り組み
「無効な解雇」であったことは、A分会員へ会社が行った契約の押し付け、異動の業務命令、懲戒解雇の過程は、組合員に対する嫌がらせとしてあったといえます。一連の会社の行った不適当な行為は、一人の労働者、且つ組合への不当労働行為であり、改めて会社に対し謝罪を要求します。
和解条項に「無効な解雇をしたことについて遺憾の意」とありますが、一人の労働者の人生を狂わした大問題です。懲戒解雇されて、その苦しみとくやしさ、家族の葛藤がどれほどだったでしょうか?朝礼で全労働者に経緯を説明してもよい問題です。
よって、組合としては、①謝罪の明確化、②嘱託制度改革として7割賃金、③嘱託再雇用において労働者と協議して双方合意のうえ契約を結ぶことを要求します。