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9月4日、クリーニング業界の問題改善に取り組んでいるNPO法人クリーニング・カスタマーズサポートの鈴木和幸理事長を招き、クリーニング業界の問題の仕組みについて講演をしていただきました。
講演について
現在のクリーニング業界には多くの消費者問題、労働問題が存在しています。しかし、それらの問題が改善されて行くよりも、問題が増えていく、改悪が広まっていくのが現状です。
現在なぜ、こんな悪循環の状態になっているのでしょうか?
それについて、日本のクリーニング業の歴史から紐解いて説明を頂きました。
クリーニングは昔、労働者というよりも“職人”(男性)の仕事として、丁稚奉公(でっちぼうこう)のような形である程度1つの場所で修行し独立していくのが主流だったそうです。
そこから、生産性の高い洗濯機の登場によって業界に大手業者が登場し、価格競争が始まりました。大手業者では職人ではなく労働者が雇用され、今のようなクリーニング労働者の大半は女性・非正規雇用という状態ができあがってきました。ですがそういった中で「クリーニング業界に労働者はいない」として扱われ、クリーニング業界の労働問題は長年スポットが当てられてきませんでした。それにより、現在の問題は増えていくが改善されないという悪循環を引き起こしてします。
そしてその価格競争の中で、「消費者問題」と「労働問題」が多発してきました。
例えば、
・住宅街での石油溶剤使用(建築基準法違反)問題
2009年、あるクリーニング工場において禁止溶剤使用の疑いがあるという記事が報道されました。建築基準法にて住宅地等での使用を禁止されている引火性の石油系溶剤を使用しクリーニングを行っていたという問題です。それは「疑い」ではなく実際に違法であると判断され、しかもさらにショックなことに、当時、同様の禁止溶剤使用はクリーニング店・恒常の半数を超える1万5000カ所でも行われていました。
最近の記事では、8年前に建築基準法違反で行政指導を受けた店・工場のうち、違法状態を解消したのは2割にとどまるという非常に残念な報道もあったそうです。
・保管クリーニング問題
これは、昨年秋に新聞などで報道された問題です。保管クリーニングとは、インターネットを使って集めた衣類を洗い、一定期間保管してから指定日に宅配するサービスです。宅配サービスが遅れることがあったようですが、この背景には、預かった衣類を長期間洗わないことが常態化していることがあったそうです。
・クレーム対応問題
クリーニング店では、お客さんと直接やり取りをする店員さんが、お客さんからのクレームの大半も受けています。
本来、お客さんから受けたクレームは「会社として受けたクレーム」ですから、パートの店員では対処できない問題は、正社員、マネージャー等の管理職、あるいは経営者が対応するというのは、どんな業界でもごく普通のことです。クリーニング業界自体、クレームが多い業界と言われていますし、店員さんは工場で洗う作業をしていなく専門知識もない(必須とされていない)わけですから、会社としてクレーム対応をしなければならないのは、なおさらです。
しかし現実は、クレーム対応を店員に丸投げにしている会社が多いそうで、NPOに寄せられる店員さんの悩みとしても、「クレームを会社が対応してくれない」などクレーム対応に関するものが多いそうです。
・労働基準法違反の問題
クリーニング業界では労務管理に関するコンプライアンスはかなり低く、残業代未払い、雇用契約書がない、有給が取れない等の労働基準法違反の問題は多発しています。
働き方改革により来年から有給休暇の義務化も始まりますが、クリーニング業界はそもそもこれまで従業員の多数を占めるパート従業員へ有給を付与すらしていない業者が多数あるそうです。来年以降、業界で大問題になる可能性が高いです。
こうした問題は低価格競争の下でなんとか稼ぎを得ようとして引き起こされた問題です。これらはクリーニング業界全体で共通した問題ではありますが、いずれの問題点にせよ、しわ寄せを受けて、洗濯を急ぐため労働時間が増えたり、品質が低下する、お客さんからのクレームが増えるなど、負担を負うのは労働者です。
こういったクリーニング業界の問題改善について、消費者の保護、クリーニング業運営の健全化、クリーニング労働者の保護を目指し、NPO法人クリーニング・カスタマーズサポートでは取り組まれています。NPOとしていかに問題改善に取り組んでいるか、また、今後、どのような取り組みが重要かなども講演いただきました。
参加者からの声
講演会の参加者からは
「洗っていないクリーニングや、建築基準法違反が今でも全然改善されていないなんて衝撃だ」
「私もお客さんからのクレームを自分で何とかしろ、と言われて悩んでいる。会社がクレームを丸投げするのはおかしい」
「クリーニングで働いている人がなんでこんな苦しまなくてはいけないのか、よく分かった」
「現場のパートにしわ寄せがきているのはおかしい」
などの感想が寄せられました。
クリーニング業界で働く従業員であれば、一度は、シフトの休みが取れない、休憩が取れない、クレーム処理をさせられたなどに直面したことがあり、業界で共通した問題で悩んでいるんだと共通認識が作られました。
労評としても、クリーニング業界で働く労働者の処遇改善のためには、労働組合が必要であると改めて実感する機会となりました。
有給取得をはじめ労働基準法等の労働者を守る法律を会社にきちんと守らせることも、クレーム問題を店員に丸投げにさせないことも、そしてそういった具体的問題を1つ1つ改善してお客様のためにクリーニング労働者として誇りを持って働くためことも、労働組合でしか実現できません。
労評では、労評クリーニング労組を主軸にして、NPO法人クリーニング・カスタマーズサポートとの連携も強化しながら、こういった講演会や労働相談などを継続的に開催する中でクリーニング労働者と団結し、クリーニング業界全体の改革に取り組みます!